Japanese individual investors Opinion Summary

It is a blog that introduces how Japanese individual investors think about stock. I am not good at English, so please read using Google translation!

株式投資の失敗で年金が減る?とんでも記事を信じてしまう残念な人へ

皆さんこんにちは!貝です。

 

マネーボイスに掲載されている『私たちの年金が14兆円も溶けた?GPIFの運用失敗で「老齢貧困社会」到来はすぐそこに』

という記事を読みました。今市太郎さんという方の記事だそうです。

私からするとんでも記事なのだけど、多数のイイネ!を集めているし、多くの方にtwitterで言及されているようで、ため息がでます。

皆金融リテラシー低すぎるヨ・・・

 

要約すると以下のようなものです。

2018年10月~12月の四半期におけるGPIF(※年金積立金管理運用独立行政法人のこと。厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行っている)が過去最悪となる「14兆円超えの損失」を出したと言われている。

これは、GPIFが保有する外国株(アップル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック等)が、かなり大きく下落したことが原因だ。

巨大優良株だけ買っていれば、平均以上の利益が出る時代は完全に終了しており、GPIFのこうした安易な投資手法も少なからず見直しをはかるタイミングにある。

もともとGPIFは長きに渡って投資レベルが非常にド素人に近く、利益を出せないことで世界的にも有名。

 

もっと簡単に要約するとGPIFが保有している外国株が暴落したから、将来の年金がやばいよ。将来やばいよ。というものです。

 

「株=ギャンブル」という認識の、金融リテラシーゼロの主婦の井戸端会議ではなく、マネーボイスといういかにも「それっぽい」サイトでこのレベルの記事を書いてはいけません。

 

まず、大学にしろ、年金基金にしろ資産を株式で運用するというのは珍しいことではありません。それは短期的に上下することはあっても、株式で資産運用した方が長期的に見れば資産が増加することが常識だからです。

 

今市太郎氏の意見を、一つづつ検証しましょう。

①2018年10月~12月の四半期におけるGPIF(※年金積立金管理運用独立行政法人のこと。厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行っている)が過去最悪となる「14兆円超えの損失」を出したと言われている。

→今市太郎氏が言及しているように、まず14兆円という数字の真偽が定かではありません。

しかし、確かに世界的にこの時期は株価が暴落したのは間違いありません。

左が日本株を代表する指数TOPIXで、右が米国株を代表する指数S&P500指数です。(分からない方がいたら、特定の株式市場全体を表す指数だと思ってください。)

 

TOPIXはだらだらと下げているので若干分かりにくいですが、S&P500は、上昇基調からの下落でより大幅に落ちているようにみえます。

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なので14兆円という具体的な数字は置いといて、いくらかの損失はしているのでしょう。

しかしこの「損失」というのがやっかいです。

これは、前年度や前の四半期の決算から見て資産が増加したか減少したかということになっていて、長期的な株式運用の場合は当てにしてもしょうがないです。

 

例えばこのように資産の推移があったとします。

10年前   1.000万円

8年前     2.000万円

5年前     3.000万円

2年前     2.500万円

1年前     4,000万円

6か月前    5.500万円

現在     5.000万円

 

冷静に見ると、10年前より資産が5倍になっています。5年前と比較しても、1.5倍以上になっているので、すばらし過ぎる資産運用です。(出来すぎですが) 

これをみて、「この半年で資金が溶けた!10%以上溶けた!大変だ!資産運用の方法を変えろ!」と騒いでいるようなものです。

たしかに半年で10%落ちてはいますが、これまでにいくら資産が増えたか計算したらすぐに分るでしょう。
つまり「損失」というのはあくまで、株価が一時的に下がったことであって、皆がもらえる年金が減るのとは別問題です。

②これは、GPIFが保有する外国株(アップル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック等)が、かなり大きく下落したことが原因だ。

あたかもGPIFがかなり偏った資産運用をしているかのごとく、読み取れる。

だが、実際はがちがちのがちだ。

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出典:最新の運用状況|年金積立金管理運用独立行政法人

 国内の債券・株式で60%程度。残りが外国債券と、株式だ。

仮想通貨で死んでいった投資家にみせてやりたいくらいの、ディフェンス力が極めて高いポートフォリオリオだ。(債権は株式より値動きが安定している)

しかも外国株といっても米国株だけでなく、世界の幅広い国に投資している。

アップルやアマゾンの比率が高いのも、これらの企業が時価総額が大き過ぎるために起こっていることで、指数しか購入することができないGPIFの資産運用の問題ではない。(ただし、特定の指数に関して、時価総額の大きい企業の影響が大きくなってしまうのは別問題だが、とても重要な問題)

③巨大優良株だけ買っていれば、平均以上の利益が出る時代は完全に終了しており、GPIFのこうした安易な投資手法も少なからず見直しをはかるタイミングにある。

→具体的に、今市太郎氏はどのように運用したらいいというのだろうか

まさか(お得意なようなので)FX?とかww

150兆円以上ある投資機関が行える資産運用は限られており、実質特定の指数での運用くらいかありません。

なぜかというと、規模の大きすぎるGPIFのような機関が盛んに市場で動き回ったり、特定の企業の株を買ったりすると、市場全体に歪みができるからです。

これは資本主義の形としてふさわしい姿ではありません。

私はこのままの資産運用の形が最も望ましいと考えます。

④もともとGPIFは長きに渡って投資レベルが非常にド素人に近く、利益を出せないことで世界的にも有名な存在でした。

→まずは以下の図をご覧ください。

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出典:最新の運用状況|年金積立金管理運用独立行政法人

GPIFは株式市場運用開始以降年率平均3%以上の収益率と71.5兆円という途方もない金額の利益を上げています。

また71.5兆円のうち、約半分が配当からの収入です。

配当というのは株価の下落と関係なく入ってくる収入なので、GPIFはどんなに株価が下がっても、莫大なキャッシュが入ってきます。

 

今市太郎氏はこの平均収益率3%という数字が低すぎるので、ド素人www

といいたいのだろう。

確かに3%という数字は決して大きくはない。

例えば米国株の代表的な指数S&P500の平均収益率の半分以下だ。

しかし、前述通りGPIFは色々なしがらみがある中で資産運用をしている。

資産規模が世界最大規模の機関と、一般投資家を同じ土俵で比較しても仕方がない。

最後に

現行のままだと将来、年金制度がやばいというのは、理由は違えど、私も今市太郎氏も共通していることかもしれません。

私は現行の年金制度は永続的ではないと思っていますが、その原因は根本の制度上の問題であって、(散々申した通り)GPIFの運用ではないと思っています。

 

今市太郎のような人が、本当はかなりうまくいっている、GPIFの批判をすることで小手先の議論に終始し、年金制度の抜本的な問題について、置き去りになってしまうことを一番恐れています。

 

抜本的な問題とは・・・またいつかに。

 

最後まで読んでくれてありがとうございました。

 

 おわり